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【Pizza 4P's「Peace for Earth」#01】現場から考える、バイオプラ製バッグのリアル | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン - IDEAS FOR GOOD

IDEAS FOR GOOD編集部がベトナムに取材に訪れたのは、2019年の春。南国ホーチミンで出会ったのは、レストランのサステナブル化に奮闘するピザレストランだった。

レストランの名前は「Pizza 4P’s」。NY TIMESやBBC、Forbesなど世界的なメディアがわざわざ取材に訪れ、UK発の人気カルチャー誌「モノクル」が選ぶ世界のベストレストラン50にランクインするなど、今やベトナムでその名を知らない人はいないほどの大人気レストランだ。1年前の取材当初はベトナム国内に11箇所だった店舗数も、2020年8月現在、その数は当時の倍の20店舗にまで拡大しており、圧倒的な成長を見せている。(参考記事:自分の幸せが、社会の幸せになる。ベトナムのピザ屋に学ぶサステナビリティの本質

同レストランは「Make the World Smile for Peace」というビジョンを達成するため、地球環境に配慮したさまざまなプロジェクトを仕掛けている。魚と野菜を同時に育てる循環型農業のアクアポニックスを取り入れた「Edutainment(エデュテインメント、楽しみながら学ぶ)」を体験できる店舗や、食品ロス削減のためのミミズのコンポストやレストランゴミの堆肥化、お店で出た牛乳パックのごみをリサイクルしたオフィス机の導入─。しかし、取材時に印象的だったのは代表の益子氏がレストランのサステナブル化に対して「まだまだなんです。」という言葉を、何度も繰り返していたことだった。

そんなPizza 4P’sが今回立ち上げたのが、そうしたサステナブルなプロジェクトに焦点をあてたオリジナル記事シリーズ「Peace for Earth」だ。IDEAS FOR GOODでは、Pizza 4P’sのSustainability Managerである永田悠馬氏によるコラムを月に1回の頻度で掲載し、Pizza 4P’sがさらにサステナビリティを突き詰めていく「過程」を追っていく。

※以下は、Pizza 4P’s Sustainability Managerである永田悠馬(ながた ゆうま)さんからの寄稿記事です。

永田さん(Pizza 4P's Xuan Thuy)

永田さん(Pizza 4P’s Xuan Thuy)

第一回目の今回のテーマは「バイオプラスチックバッグ」。世界では既に60ヵ国以上でレジ袋が有料化になり、急速な勢いでプラスチック製バッグの廃止が進んでいる。そんな中で、新たに開発が進んでいるのがバイオプラスチックバッグだ。ベトナムでもバイオプラスチックの開発は進んでおり、トウモロコシやじゃがいも、キャッサバなどさまざまなマテリアルから作られたバイオプラスチック製バッグが手に入るようになってきた。

そのような状況の中、Pizza 4P’sでもバイオプラ製バッグを、2020年3月のロックダウン中に導入。今回はその経緯や、導入により見えてきた利点、今後の課題など、サステナブルアクションに取り組む企業のリアルな現場をシェアする。

ロックダウン開始のタイミングでバイオプラスチックバッグの導入

 
2020年3月末。コロナウイルスの感染拡大を受け、ベトナム当局はホーチミン市内における飲食店の強制閉鎖をアナウンスし、すべての飲食店はその活動をデリバリーかテイクアウトのみに限定され、Pizza 4P’sもそれに従うしかなかった。

突然のロックダウンが訪れ、今後の先行きが見えないまま、Pizza 4P’sはデリバリーサービスを開始。これまでPizza 4P’sでは冷め切ったピザは美味しくないとの理由でデリバリーサービスは行っていなかった。レストランのサステナビリティ担当の筆者としても、梱包が多くなるデリバリーサービスはできるだけ避けたかったが、この状況でそんなことを言ってはいられない。

不幸中の幸いにも、1年前からずっとPizza 4P’sで検討を進めていた生分解可能なバイオプラスチック製のバックがようやく使用可能になり、ロックダウン開始からおよそ1週間ほどでこのバッグをPizza 4P’sのデリバリーサービスに導入することができたのだ。

土に還るプラスチック

このバッグは、一見すると普通のプラスチックバッグに見えるが、実は植物由来のデンプンから作られたバイオプラスチックから作られたバッグである。

Pizza 4P's

Image via Pizza 4P’s

欧州の認証機関であるTUV Austria社から「OK compost home」という生分解性に関する認証を取得済みだ。この認証は直訳すると「大規模な堆肥工場ではない一般的な家庭のコンポストで分解される」という意味。つまり常温でも、最終的にはきちんと水と二酸化炭素に分解されて土に還る。

Pizza 4P’sでは念のため、メーカーからもらった素材を土に埋めて生分解性テストを実施した。素材やメーカーによって分解スピードが異なるため、その違いを観察するのもなかなか面白い。

この「生分解性」という点は、今回導入したバッグを選定する上で個人的にもっとも重要視した点であった。

現状、ベトナム国内のリサイクル施設はほとんどが稼働していない、もしくはキャパオーバーで、およそ85%のごみはリサイクルされることなく埋立地に行きついていると言われている。また、日本のようにごみを焼却する施設もないため、ほとんどのごみがそのまま山のように積み重なり、土壌や水を汚染している。そんな状態の埋立地さえもどこも満杯でこれからのごみ問題に頭を悩ませているのが今のベトナムの現状である。

この状況では、プラごみが行政にリサイクルされることはしばらく期待できない。結果、ベトナムの現状においてもっとも環境への負荷が低いパッケージ素材として、常温でも(つまり埋立地に運ばれても)最終的には土に還るような素材である必要があった。

「バイオプラスチック」でもすべてが土に還るとは限らない

そもそも、バイオプラスチックとは何かを詳しく見ていこう。一般的にプラスチックは石油から作られるが、バイオプラスチックは石油を原料とせず、植物性のデンプンやセルロースから作られた、プラスチックに似た素材である。つまり、石油資源を使わない、もしくは減らすという意味でバイオプラスチックはプラスチックと比べて環境負荷が低いと言える。

しかし厄介なのは、植物性のものから作られていると謳っていたとしても、すべてのバイオプラスチックが生分解性を持つとは限らないということだ。中にはまったく生分解性を持たないバイオプラスチックもあり、生分解性があると謳っているのにもかかわらず、特殊な環境でしか分解しない素材もある。そうしたものは「Industrial Compostable(工業的に堆肥化可能)」と呼ばれる。

Industrial Compostableとは、60度近くの高温の状態を作りださなければ分解が進まない素材で、「生分解可能」と謳っていても、それには大規模な堆肥場のような高温かつ高湿度な状態を必要とするため、自然環境では分解しない。

さらに、中にはバイオプラスチックと普通のプラスチックをミックスした素材もある。これだと、仮に生分解可能だとしても、普通のプラスチックはマイクロプラスチックとなって環境を汚染する。つまり「バイオプラスチック」や「生分解性」といっても、一概に土に還るとは限らないのだ。

それでも「バイオプラスチック」や「生分解性」と謳えてしまうのが、一般消費者だけに限らず、企業の担当者にとってもわかりづらい原因になっている。環境に良いと思って使っても、それが分解されずにごみとして自然環境に残ってしまう、という結果を招いてしまいかねない。

Image via Pizza 4P’s

バイオプラスチックに対する批判。生ごみからバイオプラを作る?

実は今回Pizza 4P’sで導入したバッグが正解だとも限らない。このバッグを製造するためには原料となるトウモロコシを作るための農地が必要となり、それは食糧不足が懸念される現在、農地や食糧作物をパッケージに使用して良いのかという議論がある。

また、それを育てるためには大量の水が必要となる。世界的な水不足、そして世界中の水使用量のほとんどを農業が占めていることを考えると、それをパッケージのためにさらに増やすことが賢明とは言えない。

では、これら現在のバイオプラスチック素材に替わるものはあるのだろうか。現在、通常は廃棄されてしまうような果物の皮や魚の鱗、急速に再生可能な海藻や藻類など現在使用されているトウモロコシやキャッサバといった食用作物に替わるサステナブルな素材開発が世界中で進んでいる。まだまだコストが高く、研究段階のものばかりだが、将来的に安価に製造可能になれば、よりサステナブルな素材として普及していく可能性がある。

それでも、その素材を工場で生産・輸送するためのエネルギーがかかる。製造にエネルギーを必要とするものを作っては捨てる、ということを繰り返すのは、結局サステナブルとは言えない。もしかしたら新しい素材を開発するよりも、マイバッグを持参するというシンプルな方法が、もっとも環境負荷の少ない方法かもしれない。

バイオプラ製バッグに対するベトナム人の反応

本バッグを導入した後、SNS上では「デリバリーでも環境に良いことに投資するのはすばらしいですね!」や「すごい!グリーンなことを選択したのはとても思慮深いと思います!」など、総じて好意的な反応をベトナム現地の方からも得ることができた。

また、プラスチックのように見えるけれども実はプラスチックではないバッグに驚く社内のベトナム人スタッフも多く、プラスチックと比べるとコストは高いが「環境に良いことにお金をかけることも大事」という社内の考え方も少しずつ深まっているようにも思う。

また、驚くことにホーチミン市内のスーパーマーケットでPizza 4P’sのバッグをマイバッグとして二次利用している人も見かけた。耐久性があるのはもちろん、マスコットキャラクターのBuuをデザインしたことも良かったのかもしれない。

こういった活動は本当に時間がかかるものだが、こういった反応を見るとやる価値のあることだと実感する。本当に環境に良いものとは何か自問し続けながら、これからもPizza 4P’sとして取り入れていきたい。

次回の「Peace for Earth」では、チーズ工場から排出され、通常では捨てられてしまう「ホエイ」の再利用に焦点を当てていく。

筆者プロフィール:Pizza 4P’s Sustainability Manager 永田悠馬(ながた ゆうま)

1991年、神奈川生まれ。東京農業大学を卒業した後、カンボジアに渡航。2014年からカンボジアの有機農業や再エネ関連の仕事に携わったのち、2018年にベトナムへ移住。ケンブリッジ大学ビジネスサステナビリティ・マネジメントコース修了。現在はPizza 4P’sのサステナビリティ担当。著書に『カンボジア観光ガイドブック 知られざる魅力』。

【参照サイト】 Pizza 4P’s
【参照サイト】 Trash talk: Vietnam slowly sinking under mountains of waste

Edited by Erika Tomiyama

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September 02, 2020 at 10:00AM
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