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パラスポーツ支援の新たな形 協賛金だけじゃない、社員が大会運営に参加 選手所属の長瀬産業 - 東京新聞

 日本パラ陸上競技連盟が主催する新たな国内大会が7月に東京・駒沢陸上競技場で開かれた。東京パラリンピック視覚障害男子1500㍍銀メダリストの和田伸也が所属する長瀬産業が協賛した「NAGASEカップ」。同社は和田の活躍を通じてパラスポーツの力を感じてきた。協賛金だけではない支援のあり方を探っており、さまざまな試みが詰まった大会となった。(神谷円香)

ボランティアで運営を支える社員ら=東京・駒沢陸上競技場で

ボランティアで運営を支える社員ら=東京・駒沢陸上競技場で

◆受付や給水などで活躍

 競技前の受付係をしたり、レースを終えた選手に水を渡したり。会場のあちらこちらに、そろいのTシャツを着たスタッフの姿があった。同社グループから社員20人がボランティアで参加し、2日間にわたり293選手が競った大会を支えた。「参加型の支援」は同社がこだわったポイント。「(昨年の)東京パラリンピックが終わって、レガシー(遺産)を残していこうという、非常に意義ある大会でした」。最終日、男子1500㍍を走りきった和田が声を弾ませた。

 同社は2018年、全盲の和田をアスリート社員第1号として採用した。12年ロンドンから3大会出場のパラリンピアンの社内講演は好評で、大会に応援に行く社員も。化学系専門商社として国内外に多くの拠点を持つグループに一体感が醸成されていった。

 パラスポーツと積極的に関わっていこうとする中で、「選手たちの努力の成果を披露する場をつくろう」と、大会の開催を検討。日本パラ陸連主催では初めて企業名の冠大会が実現した。

世界記録を出した保田明日美を撮影した大会公式インスタグラム(長瀬産業提供)

世界記録を出した保田明日美を撮影した大会公式インスタグラム(長瀬産業提供)

◆選手も喜ぶアイデア続々

 「いつもと違う大会を」と社員たちが考えた試みは随所に。大会を盛り上げるために公式インスタグラムを開設し、会場でポーズを決める選手を撮影して次々にアップした。世界記録を出した選手への賞金も設定し、女子400㍍で1分21秒50の新記録を樹立した片脚義足の保田やすだ明日美あすみ(みえのパラ)が20万円を獲得した。後日「義足の部品を新調した」と喜びの報告が届いたという。

障害の有無の区分のない男子100メートルで競い合う井谷(右から2人目)ら=東京・駒沢陸上競技場で

障害の有無の区分のない男子100メートルで競い合う井谷(右から2人目)ら=東京・駒沢陸上競技場で

 大会は、来年10月へと1年延期されたアジアパラ大会の派遣標準記録に挑戦する機会となった。ただ、記録を出すことが目的の全てではない。障害や年齢の区分のない種目もあり、24年のパリ・パラリンピックを目指す片脚義足の井谷俊介(SMBC日興証券)は、男子100㍍で隣のレーンの健常者を追い抜いてゴールし、握手を交わした。競技人口が少ないパラではなかなか体験できないデッドヒートを演じ「(抜かされて)あの人びっくりしただろうな。僕も楽しかった」と笑った。日本陸上界が推進している「競技場の中での共生」が体現された。

NAGASEカップ開会式であいさつをする朝倉研二社長=東京・駒沢陸上競技場で(長瀬産業提供)

NAGASEカップ開会式であいさつをする朝倉研二社長=東京・駒沢陸上競技場で(長瀬産業提供)

 視覚障害の選手がレース中に健常者や知的障害の選手とぶつかって転倒する事態が起きるなど、課題はあった。大会は来年以降も続ける方針で、運営を見直して改善につなげる。「単にお金を出して協賛するだけなのは、どうしても嫌」と話す朝倉研二社長が目指すのは、手を広げすぎず、細くても継続的な支援。自国開催のパラリンピックが終わっても「熱量はこれっぽちも減っていない。この大会でより大きくなった」と意気込んでいる。

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