ホンダは先週の金曜日に、2021年シーズンをもって、F1へのパワーユニットサプライヤーとしての参戦終了を発表した。今回はその発表後初めて迎えるレースウイークになる。
ホンダは改めて「ホンダF1 チームは2021年シーズンをすべて戦い終えるまで、これまでと変わらぬ姿勢で、情熱とともにレースに挑んでいきます。アストンマーティン・レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダの両チームとともに勝利を目指せるチャンスは、まだ20戦以上残されており、一つ一つのレースを大切に戦いながら、最後まで全力で駆け抜けていきます」と述べた。
コロナ禍の影響により変則的となった2020年のカレンダーには、ムジェロや ポルティマオのようなこれまでF1を開催したことのないサーキットもあれば、イモラ、そして今週末のニュルブルクリンクなどの伝統的なサーキットも追加され、注目を集めてきた。ニュルブルクリンクは、長い歴史のあるコースだが、F1の開催は 2013年にレッドブル・レーシングが優勝したレースを最後に行われておらず、現行のハイブリッドシステムを搭載したマシンでのレースは今回が初めてとなる。
モータースポーツ界において、最も伝統あるコースの一つと言えるニュルブルクリンクは、南北2つのコースの総称。今回のF1で使用されるのは、全長20㎞以上を誇り、“Green Hell(緑の地獄)”の愛称で有名な北コース、ノルドシュライフェではなく、GPシュトレッケと呼ばれる南側のグランプリコース。ニュルブルクリンクは、ドイツGPとしてだけでなく、同国内でF1が2戦行われる際には、1984年にヨーロッパGP、1997年と98年には、ルク センブルクGPと名前を変えて開催された。
F1が10月にニュルブルクリンクを訪れるのは2回目。山間部に位置するため天候は荒れやすく、レースに影響するだろう。現状では雪の可能性も報じられており、気温の低いウエットコンディションでレースが行われる見込みとなっている。
田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「先週、ホンダは2021年末でF1参戦を終了するという決定をアナウンスしました。ホンダF1のプロジェクトメンバー全員が、我々のすばらしいパートナーであるアストンマーティン・レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリ とのプロジェクトを終えなければいけないということを本当に残念に思っています。両チームとここまで一緒に進化を続け、表彰台や勝利を獲得してこられたことを改めて誇りに思うとともに、両チーム、ドライバーと一緒にこの先に残された一戦一戦を今まで同様に全力を尽くして戦い、さらなる勝利をつかみ取りたいと考えています。また、両チームはもとよりFIA・F1に対してもパワーユニットマニュファクチャラーとしての責任を来シーズンが終了する最後まできちんと果たしていきます。今回のレースの舞台となるニュルブルクリンクは、F1での長い歴史を持つサーキットです。緑豊かなアイフェル山地の中に位置し、標高600mほどの山地のために荒天・低温になりやすいということが特徴です。今週末も雨の予報や、今までのレースと比べてかなり低い外気温と路面温度が予想されています。ニュルブルクリンクは近年のF1カレンダーからは外れていたため、2013年以来の開催となります。したがって、現行のハイブリッドレギュレーション下では初めてのレースとなりますので、シミュレーションなど事前検討を十分に行うこと、また走行開始から得られたデータを解析し最適化を迅速に進めることが重要になると考えています。ロシアGPに続き4台がきちんと完走すること、パフォーマンスを最大限に発揮してよいレースができることを目指して臨みます」
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
「ニュルブルクリンクへ向かうにあたって、気分はいいです。とてもリラックスできていますし、F1では走ったことがないサーキットなので、楽しみにしています。ムジェロと同じように、未知の経験にはわくわくします。F3以来ニュルブルクリンクではレースをしていないので、F1マシンではどうなるのでしょうか。とてもテクニカルなコースなので、僕は好きです。気温はこれまでのレースよりも大幅に低くなりそうですし、雨の可能性も少しあるので、おもしろいレースウイークになるかもしれません。ホンダがF1から去るというのはとても残念です。僕らはとてもいい関係を築けていて、プロジェクトに関わる全員が献身的に努力しているのを見てきましたし、僕にとっても特別な存在であるだけに、なおさらです。今の段階で言えるのはそれだけですし、僕らが目指していくものは何も変わりません。今シーズンもまだレースがありますし、来年もともに戦っていくわけで、残りすべてのレースでポディウムを目指していきます。これは僕らにとっていい目標です。僕らは常に、可能な限り最大の結果を出していきます」
アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
「前戦のあとにオフを過ごしましたが、英国は天気がよくなかったので、あまり多くのことはできず、土曜日にカートへ行った以外は、ほぼ家にいてリラックスしながら、家族と話したりしていました。レンタルカートで、雨の中をスリックタイヤで走るのはとてもおもしろかったです。ニュルブルクリンクは本当にいいコースで、フォーミュラ・ルノーとF3で走った経験があります。独特なレイアウトで、傾斜のある高速コーナーは、ドライバーにとってはとても楽しいです。今年のレースは高速の展開となるはずですが、天候は悪いという予報なので、ずっとドライだったら逆に驚いてしまうと思います。おもしろいレースウイークになるはずですし、防水対策をしなければですね! 一緒に働くのは本当に楽しかっただけに、ホンダが去ってしまうというのは悲しいです。彼らはすばらしいチームです。ただ、僕の中では、レースウイークに向けて何も変わりません。ドライバーとして目の前の仕事に集中し、できる限り力強い結果を残してホンダとのパートナーシップの終わりを迎えるつもりです」
ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
「まず始めに、過去4年にわたってともに歩んできたホンダがF1から去ることに悲しい思いです。ホンダの人々は僕のキャリアの中でも大きな役割を果たしてくれていますし、彼らと働くことが大好きです。まだ来年末までは仕事ができますし、その中でさらなる勝利へ向けて戦っていければと思いますし、その中でホンダがタイトルを狙える位置にいることを願っています。ドイツでの戦いですが、僕らはロシアでの好パフォーマンスを経てニュルブルクリンクへ向かうことになります。レースではもっと上を狙えたはずです。予選でQ3に進出したことがデメリットになる場合もあって、Q2で履いたソフトタイヤでスタートした結果、かなり早めのピットストップを強いられ、第2スティントでトラフィックにつかまってしまいました。ただ、ペースはよく、特にクリーンエアの場面では顕著だったので、バーチャルセーフティカーの際にややギャンブル的なピットインをしましたが、効果的ではありませんでした。いいバトルができましたし、7位までは狙えたと思います。ニュルブルクリンクでは、2014年にフォーミュラ・ルノー3.5でレースをしたのが最後です。なかなかテクニカルなレイアウトで、独特の複合コーナーがあり、低速と中速コーナーが入り混じる中でリズムに乗っていくことができます。そして、1コーナーは下り坂でのブレーキングとなるので、難しくなる傾向があります。要するに、一筋縄ではいかず、おもしろいサーキットなんです。気温が低くなるようですが、それもここでは特に不思議ではありません。寒さについてはマシンに乗ってガレージで待機しているとき以外はあまり問題ありませんが、待機時は本当に寒さを感じます。タイヤの扱いについても、温度を上げるのが難しくなるはずです。ここまで雨のレースがあまりないので、降ってくれればと思っています。また、オーバーテイクが簡単なサーキットではないので、予選が重要です。しばらくここでのレースはなかったので、フリー走行ではたくさん仕事をして、なるべく早く正しいセットアップを見つけなければなりません。全員にとっておもしろいチャレンジになるはずです」
ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
「ロシアでのホームレースは、後半で遅いマシンに引っかかって少しフラストレーションはあったものの、かなり満足のいく結果となりました。チームにとって貴重なポイントを獲得できましたし、レースペースもかなり力強かったです。グランドスタンドにファンがいる光景がどれだけいいものなのかを、しばらく忘れていました。無観客のレースが続いたことで改めてそれが分かりましたし、レース前に観衆の姿が見えて、僕の名前を呼ぶ声が聞こえたことで、とても胸が高鳴りました。今年は状況が変化したことで、観客の皆さんがいることの重要性を再認識したと言えるでしょう。ここ最近のパフォーマンスには満足できており、スパから調子が上がり続けています。エンジニアとの仕事もうまくいっており、競争力を発揮するために何が必要なのか、理解が深まっています。こうした正しい方向性の中で、ソチでもまた進歩できたので、ニュルブルクリンクでも学びを止めず、ハードにプッシュしていきます。ニュルブルクリンクではしばらくレースをしておらず、GP3で走って以来、7年ぶりです。長い歴史を持つ伝統的なすばらしいサーキットで、とても楽しみです。かなり気温が低くなりそうなので、天候に注目されています。寒いコンディションというのは、テストでは経験があるものの、レースでは全くないので、興味深い展開になるはずです。みんな、雪だけは降らないでくれ、と思っているはずです(笑)。特筆するようなコーナーはないものの、走りを楽しめるコースで、低速、高速両方のシケインがあっておもしろいです。ターン1は下り坂でのブレーキングとなるので、特にレースの1周目は用心しなければならないと思います。攻め方も複数あるので、いいラインを見つけなければなりません。僕らのマシンパフォーマンスについては、ロシアで明るい兆しが見えたので、それが継続すれば好結果を得るチャンスがあると思います。願わくは、コンディションの影響を受けなければいいですね。ほかの中団勢も非常に強いのですが、僕らもその中で戦うことができています。最後に、来年末でホンダがF1から去ってしまうというニュースを聞いてとても驚きました。ホンダのエンジニアとの仕事を楽しんでいたので悲しいですし、これまで可能な限り最高のパワーユニットを届けるために懸命な努力をしてくれて、一緒にいい結果も出してきただけに、残念です。現場にいるホンダのメンバーは全力で取り組んでいるので、彼らはF1にいる限り常にプッシュし続けてくれるはずです」
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル / アルファタウリ
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