
新型コロナウイルス禍のため原則無観客で開催され、賛否が割れた東京オリンピック。スポーツイベントの価値などを分析する専門家に聞くと、「今までとは違う状況下だからこそ見えたことがある」という。「不完全な五輪」で何が見えたのか。札幌市が招致を目指す2030年冬季大会で語られるべき意義は何か。【長野宏美】
話を聞いたのは監査・コンサルティング大手「EYジャパン」の関係法人で、新しい時代に求められる企業価値に関するコンサルティングをしている松尾竜聖氏(37)と19年ラグビーワールドカップ(W杯)の大会組織委員会の委託を受けた「大会成果分析レポート」を中心メンバーの一人としてまとめた松浦義正氏(50)。
――五輪のような大規模なスポーツイベントが支持されて、人々の心を動かすには何が必要でしょうか。
松浦義正氏 必要な条件は三つあると考えています。
一つ目は、安心安全に開催できるということ。大会自体が危険だったり、ホスト国やホストシティーが安心して観客を迎えられない状態だったりすると、そもそも開催ができるのかという話になります。
二つ目の条件は人々が感動を体験できること。プレー(瞬間)、ゲーム(試合)、アスリート(人間)など、エンターテインメントを超えた感動体験を重ねることで人々に「開催してよかった」との支持を広げます。
三つ目の条件は「人とのつながり」を体験できること。W杯などで自国代表を応援し、勝利によって国民が一つになるのは「同一性」によるつながり体験の代表例です。また、普段の生活では交わらない、海外から観戦に訪れた人などとW杯の話題を通じて交流する「多様性」によるつながり体験は国際スポーツイベントならではの機会です。趣味や興味が多様化した現在、一つの話題で人々がつながる機会は貴重です。19年ラグビーW杯が支持された理由はこのつながり価値が大きかったと私たちは振り返っています。
脳内物質から見た影響は?
――コロナ禍で無観客だった東京五輪は三つ目のつながり価値を生み出しにくかった。
松浦氏 はい。東京五輪でもホストタウンなどで交流の機会を作る計画でしたが、新型コロナの感染拡大ですべて中止になりました。確かにプレーには感動したけれど、資金を投じてコロナのリスクまで負って開催する必要があったのかという気持ちになるのだと思います。
松尾竜聖氏 多くの場合、大規模なスポーツイベントの価値を振り返る際に、経済的にどのくらいインパクトがあったかという側面で語られがちです。しかし、私たちは経済的な側面以外にも多面的に価値を見ていく必要があると考えます。そこで、今回は「人々の幸せや豊かさの実感への貢献」という視点から、大規模なスポーツイベントの価値を捉えるとどうなのか、ということについて話をしたいと思います。
例えば、脳科学では以下の主に三つの脳内物質が分泌されるときに、人は幸せを感じるということがわかっています。一つ目は、安らぎや安心を感じるセロトニンという物質。二つ目は、愛情やつながりなどを感じるオキシトシン。そして三つ目は、ドキドキや興奮などの高揚感を感じられるドーパミンです。
この視点からすると、東京五輪では安心や安全が脅かされた状況下であったこと、そして人と人が交流し、つながりを感じることや感動を共有する機会が限定的でした。そのことによって、安らぎや安心などを感じるセロトニン的な要素と、つながりや愛情を感じるオキシトシン的な要素が出にくい状況であったといえます。
もちろん、競技そのもので心を動かされたり、興奮したりするので、ドーパミン的要素は残るわけですが、ドーパミンは短期的なもので、なかなか人々の実感値として続いていくものではないです。逆に今回感じづらかったセロトニンやオキシトシンは中長期的に持続する効果があります。例えば、スポーツイベントを通して築いた人とのつながりや絆のようなものは、大会が終わってもなかなか消えないわけです。
ウェルビーイングの分野においても、特に人のつながりや居場所を感じられること(オキシトシン的要素)は、人々の幸福実感に影響を与えるということで、大変注目されている価値です。
…
from "スポーツ" - Google ニュース https://ift.tt/Z6NjAl7
via IFTTT
Bagikan Berita Ini
0 Response to "脳内物質も関係 何がスポーツイベントの価値を生むのか - 毎日新聞"
Post a Comment