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かむ力が能力を引き出す プロスポーツ選手用のガムに秘められた効果とは 東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

ベンチでガムをかみながらバットを手にする千葉ロッテの藤原

ベンチでガムをかみながらバットを手にする千葉ロッテの藤原

 ガムをかみながらプレーする選手は珍しくない。もし「マナーが悪い」と眉をひそめる人がいるなら誤解だ。かみしめる行為はパフォーマンスに好影響を及ぼすといわれる。その効果を探った。(高橋淳)

◆筋肉の活動量が増加

 口を動かしながら、バットを構える。5月のある日、プロ野球千葉ロッテの藤原外野手は球場で体をほぐし、夜の試合に備えていた。普段から「ガムをかむことはリラックスやパフォーマンスにつながる」と感じ、練習前や試合中によく口に入れているという。

 高卒5年目の期待の若手は今春、味や硬さを自由に選べる「自分専用ガム」を菓子大手のロッテから提供された。心強い「武器」も得て臨む今季は、首位を争うチームで不可欠な戦力となっている。

試合前、ガムをかみながら練習する千葉ロッテの益田直也

試合前、ガムをかみながら練習する千葉ロッテの益田直也

 重いものを持ち上げる時や短距離走のスタートなど、私たちは力を出したいタイミングで無意識に食いしばる。それには科学的な裏付けがちゃんとある。「正しいかみ合わせでかむと筋力がアップします」。東京歯科大の武田友孝客員教授(スポーツ歯学)が解説してくれた。

 あご周辺の筋が働くと、筋肉の運動を調節する脳幹に刺激が伝わり、筋肉の動きが強まる。その結果、各部位の筋肉の活動量が7〜19%上がる。かむ力が大きいほど効果も大きく、その力を鍛えたり、必要な時に正しくかめるよう習慣化するのに、ガムは適しているという。

◆集中力や判断力も向上

かむ力とスポーツの関係を解説する東京歯科大の武田友孝客員教授

かむ力とスポーツの関係を解説する東京歯科大の武田友孝客員教授

 期待できる効果は他にもある。首の筋肉にも効いて首が安定し、体の軸がぶれにくくなる。ある実験で20歳前後の男女約100人がガムをかみながら垂直跳びをしたら、かんでいない時の記録と比べて数センチ伸びた。重心がぶれずに真上に跳べるようになったからと考えられる。

 「かみしめると認知機能をつかさどる前頭前野の血流が良くなり、集中力や判断力の向上にもつながります」と武田さんは付け加えた。さらに、精神を安定させる脳内神経伝達物質セロトニンの分泌を促し、リラックスやリフレッシュ効果も望めるという。

 筋力アップは野球の打者なら打球の飛距離につながり、首が安定すれば視線が定まり、投手の球を捉えやすい。首の安定は、ラグビーならタックル時の頭の揺れを軽減し、脳振とうを防げる。集中力の向上やリラックス効果は、多くのスポーツに生きそうだ。

◆中嶋常幸のかむ力は「とてつもない」

 日本を代表するプロゴルファー、68歳の中嶋常幸はガムを長年愛用している。「かむと集中力が増し、悪い緊張ではなく良い緊張に変わっていく。唾液が出て口内が潤うので、水分を取り過ぎなくて済む」と利点を説明する。

 武田さんに言わせれば、中嶋のかむ力は「とてつもない」。2年前の測定で、20〜30代男性35人の平均の約1.8倍もあった。武田さんは「トップ選手は口のコンディションを大切にしている。ひと昔前は虫歯を放置し、痛くて力を出せずに終わった日本代表選手もいた。意識は大きく変わっている」と話す。

 武田さんはアスリートに限らず「ガムトレーニング」を勧める。「左右バランス良く5分ずつを、毎日少なくとも3回。漫然とではなく、意識してかむ」がポイントだ。

◆プロフェッショナルガム…硬さは?味は?

ロッテが開発したプロフェッショナルガム

ロッテが開発したプロフェッショナルガム

 千葉ロッテの藤原に届けられた自分専用ガムは、10種類の香味、2種類の形、3種類の硬さを好みで組み合わせられる「プロフェッショナルガム」。一般的なガムと比べてかみ応えが持続し、かむ力のトレーニングに向いている。これまでに藤原ら千葉ロッテの選手やサッカーJ1川崎の登里享平、ゴルフの中嶋ら30人以上に提供されている。

 ロッテは昨年から「かむスポプロジェクト」と題し、かむことの大切さを発信している。ガム提供はその一環で、選手への誤解をなくすのも目的の一つ。「やる気がないとか、だらだらしていると思う方々がいる。そうではなく(パフォーマンスを上げるための)努力の証しなんだと、世の中の見方を変えたい」。プロジェクトを担当する毛利彰太さんは力を込める。

 1998年、サッカーのワールドカップ(W杯)フランス大会で1次リーグ敗退した日本代表に、ハプニングが起きた。FW城彰二が帰国時、空港でサポーターから飲みものをかけられた。大会で無得点に終わったエースは、ガムをかみながらのプレーが批判の的に。かみ合わせを改善するため、医師に相談した上で頼った「ガム」だったが、そうした内情は当時あまり知られていなかった。

 毛利さんによると、日本の優勝で沸いた今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも「選手がどうしてガムをかんでいるの」というコメントが交流サイト(SNS)で散見されたという。

◆グミにも効果 硬さで使い分け

 ガムと同じような効果が期待できるのがグミ。サッカー女子WEリーグ、日テレ東京Vの宮川は「チームバスによる移動中などリラックスしたい時に食べている」と話す。(上條憲也)

 多くの商品を手がける明治の研究によると、かみ応えが弱いグミは「リラックス」、中程度なら「やる気が出る」、中程度から強いでは「覚醒」の感覚を引き出しやすい。状況に応じて食べ分けられるともいえ、同社の担当者は「スポーツ選手と相性はいいかもしれない」と話す。

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