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部下が作った資料を目の前でゴミ箱に…パワハラ上司を告発した結末 - ニコニコニュース

 2020年6月、パワハラ防止対策を企業に義務づける「改正労働施策総合推進法」(通称“パワハラ防止法”)が施行されます。しかし、実際にはパワハラ問題への予防が不十分な会社がまだ多いようです。

 立花宗佑さん(仮名・30歳)は、2018年夏までとある企業のマーケティング部門に在籍。退職した理由は、直属の上司のパワハラが原因でした。

睡眠時間を削って作った資料をゴミ箱に

「営業部を経て、入社3年目の春に異動してきたんですけど、そのときに上司としてマーケティング部のマネージャーに就任したのが問題のパワハラ上司でした。彼は転職したばかりでしたが、ほかの会社で実績を残してきた方で、周囲からもかなり期待されていました」

 第一印象はそれほど悪いものではありませんでした。むしろ、仕事のデキる頼りがいのある上司と一緒に仕事をするのを楽しみにしていたそうですが、その期待は見事に裏切られてしまいます。

コミュ力や交渉スキルには長けていたようで、自分より立場が上の人間やクライアントからの評判はかなり良かったと思います。でも、私に対しての態度は最悪。自分が担当している案件の資料作りはほとんど部下任せです。

 それでも作成する時間に余裕があればいいですが、『明日の朝までに用意しておけ』って前日に平気で言ってくるんです。ほとんど嫌がらせですよね。睡眠時間を削ってなんとか完成させても『ハァ、こんなクオリティの低い資料じゃ使えねぇよ』って。ダメ出しだけならいいですが、その場でごみ箱に捨てられたこともありました。

 一応、事前に同じ部署の先輩たちにも確認してもらって、『大丈夫』とのお墨付きをもらっていたんです。だから、叱責されても理由すら納得できないことが多く、厳しいのではなく自分に対するパワハラだと感じるようになったんです」

「タイムカードは定時に帰ったことにしておけ!」

パワハラ

 マーケティング部には上司を頂点に、立花さんをはじめ部下が5人。冷静に観察していると、同じ部署でも自分以外の人間には対応が違っていたそうで、彼にはなぜそこまで上司に嫌われたのかは今でもよくわからないといいます。

「当時は自覚していないだけで何か問題があるのかもしれないと思いました。それでなんとか状況を変えたいと、コミュニケーションスキルを学ぶための外部セミナーに通ってみたり、大企業で社員研修などを担当していた大学時代の先輩などに相談し、自分なりに関係改善の努力はしてみたのですが効果はありませんでした」

 上司からは相変わらず嫌がらせの資料作りを頻繁に命じられていましたが、社内の働き方改革を理由に「残業をするな」「タイムカードは定時に帰ったことにしておけ!」と理不尽な要求までされるようになります。

 こうした状態が2~3年と続くうち、立花さんが抱えるストレスも次第に大きくなっていきます。

関係改善を試みるも態度は変わらず

「ある日、珍しく早く帰れる日があり、会社を出たところで営業部時代の上司に声を掛けられ、飲みに誘われたんです。その人は部長級の統括マネージャーに出世していて、『困ったことがあったらいつでも相談に来い』と言ってくれました。ただ、このときはお酒が入っていたので、グチを吐くような形になるのはダメだと、言うのを我慢したんです」

 しかし、上司からのパワハラは一向に収まる様子はなく、後日、改めて統括マネージャーに相談。そのときは「よく話してくれたな」と温かい言葉をかけてくれて、2人で人事部に行って上司からパワハラを受けていることを報告。

 これで今までのような態度を改めるだろうと期待したのもつかの間、数日後に上司から「お前、俺からパワハラを受けてるって訴えてくれたそうじゃないか」と言われてしまいます。

人事部トップはパワハラの訴えを無視

職場の男性

「後で知ったのですが、人事部のトップがなんと上司の高校時代の先輩だったんです。しかも、ウチの会社にヘッドハンティングするきっかけを作った人らしく、その人からは『君の思い込みが強く、パワハラとは言えない』って。

 上司は、私に対する態度はともかく、ウチに転職してからも仕事の実績を出していました。それに上司が問題を起こしたとなれば紹介した人間の責任問題にも発展しかねません。そういうこともあって、私の訴えを黙殺することにしたんだと思います」

 これで会社に残ることに何の希望も見いだせなくなった立花さんは辞表を提出。すんなり受理されましたが、統括マネージャーからは何度も謝られたとか。

「社内でも2人の関係を知っていた人間はほとんどいなかったので仕方ないですよ。むしろ、私の件で立場が悪くならないか統括マネージャーのほうが心配でした」

 退職後は故郷に帰り、父親が経営するプラスチック部品メーカーに勤務。営業課長兼パワハラ対策の責任者として毎日汗を流しています。

「社員50人に満たない田舎の小さな会社のため、パワハラ対策などが進んでいませんでした。そこで一定以上の年齢の社員を対象に研修を行ったり、外部機関と提携して社員専用の相談窓口を設置するなどしてパワハラの起きない社内環境づくりに努めています」

 上司のパワハラ放置に失望して会社を去ることになりましたが、今はその辛い経験を前向きに生かすことができているようです。

― 特集・令和の「ブラック企業」事件簿 ―

TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中

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February 27, 2020 at 01:48PM
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