コンピューターゲームの腕前を競う「eスポーツ」が、お年寄りにも広がっている。シニア向けeスポーツの先駆けとなった神戸の施設では、勝負の楽しさだけでなく、人との関わりや認知症予防など幅広い効果が期待され、利用者は増え続けている。(小谷千穂)
「5連鎖はいったけど、そっからいかれへん」「私もや。どうやってやるん?」
60歳を超えた女性たちがコントローラーを握り締める。画面に映し出されるのは、上から落ちてくる丸いキャラクターをそろえて消すパズルゲーム「ぷよぷよ」。時に冗談を言って笑い合ったり、お互いの技を伝えたりして「eスポーツプレーヤー」として腕を磨く。
神戸市中央区にある日本初のシニア専用eスポーツ施設「ISR e-Sports」。会員は60歳以上。2020年7月にオープンして丸2年、会員は60~90歳の約150人に増え、最大6席が曜日によっては予約で満席になることも多い。
「定年退職後の生きがいづくりに、新しいコンテンツで挑戦したかった」と話すのは施設の代表社員、梨本浩士さん(48)。人材会社に勤めており、お年寄りに向けた社会貢献を模索していた中、新スポーツとしての地位を確立し、若者に浸透していたeスポーツに目を付けた。
施設では(1)ゲーム前の準備運動(2)プレー時間90分を守る(3)ゲーム後は休息を30分設ける-とルールを決めている。健康が一番の目的のため、依存しない範囲で楽しみ、体や頭を動かして認知症予防に。全国大会には参加しないなど競技としての色は抑えた。
他にはない横のつながりが人気の一つ。休息の時間にはコーヒーを飲みながら利用者同士で交流する。
「近所では健康や孫の話ばかりやけど、ここでは『三段積みってどうやってやるの』とかゲームの話しかしない」とうれしそうなのは、元高校教師の女性(68)=神戸市東灘区。ゲーム好きの教え子の気持ちを知ろうと20年秋に門をたたいた。住む場所も家族構成も知らない、ただ同じ趣味に向かう仲間と過ごすのがやりがいという。
座ったままできるため、足が悪いお年寄りにも障壁はない。同市須磨区の女性(79)は今春、同居していた夫と、息子の妻を相次いで病気で亡くし、一人の時間が増えた。以前は社交ダンスに通っていたが、膝が悪くなり断念。息子の妻が生前、勧めてくれていた同施設に5月から入会した。
女性は「動体視力の数値が低くて…」と最初は後ろ向きだったが、梨本さんに「大丈夫。ゲームは誰にも迷惑をかけない」と励まされ、徐々に上達。最後には「もっと頻繁に来たい」と目を輝かせていた。
シニア向けeスポーツは全国で広がりつつあり、神戸市や仙台市は通信会社などと組み、実証実験を行った。また富山県などは今年3月、60歳以上の参加者が集う「全国シニアeスポーツ大会」を開催。決勝大会では15道府県から約30人のプレーヤーがオンラインで参加して優勝を競った。
eスポーツの高齢者への効果を調査する島根大の宮崎亮准教授は「eスポーツで心拍数は上がるものの、覚醒によるもので、他の運動の代わりとなるわけではない」と前置きしつつ、「高齢化で生活が平板になりやすい中、手や頭を使って勝負したり、外に出て人と話したりするという意味では非常に刺激的で効果がある」とみる。またゲームの画面上では「体格差や年齢差、性別に関係なく対等に戦えるため、気分が高揚しやすい」として、認知症予防に一定の期待を示した。
「ISR e-Sports」は土日休み。午前10時~午後5時。1回計2時間の3部制で要予約。同店TEL078・366・1355
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