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スポーツDXと3つのIT 上林功・追手門学院大准教授 - ITmedia NEWS

産経新聞

 スポーツにおけるDXは、新たなビジネス創出やコンテンツの充実に不可欠なものと言われます。先月、複数のIT企業やスポーツ関連企業でつくるスポーツエコシステム推進協議会が設立され、「スポーツDXファクトブック」が公開されました。ITをエンタメ活用したファンエンゲージメントの向上やNFTなどによる商流の創造とあわせ、新しいスポーツの興行や環境整備について触れられています。

photo 横浜DeNAベイスターズの試合のライブビューイングアリーナの内観イメージ図=横浜市提供

 スポーツエンタメにおけるITを考えるとき、演劇などの舞台芸術が参考になります。古くから積極的な取り組みが行われており、メディアアートのような新しい枠組みとともに継続的な検討が進められています。例えば、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのデビッド・ゼルツァー氏は1992年にITの関わり方の特徴を「臨場性」「自律性」「双方性」の3つにまとめました。

 「臨場性」とは、その場にいるかのような「体験」に関わる技術です。プロバスケットボールのBリーグでは、映像や音だけでなく施設の振動を再現する触覚伝送によってオールスターゲームの会場のライブ再現を行っています。また、横浜スタジアムの近隣の駅前再開発の中には「ライブビューイングアリーナ」が併設されるなど、観戦サテライトを都市環境へ展開する試みが行われています。

 「自律性」に関わる技術は「運用」の効率化、合理化を進めます。これまでのスタジアムやアリーナでは音響や映像など全て別々の操作盤がずらりと並べられ、しかもそれらが同期しておらず、人の手でタイミングを測るなどベテランスタッフに頼るしかありませんでした。チケットや施設利用の予約、売店の売上管理などもいまだに自動化は模索状態です。IT導入により各所をネットワーク化することで、将来的にはスタジアム、アリーナの少人数運用も可能となるでしょう。運用コストを下げることも期待できます。

 「双方性」は「交流」に関わる技術で、選手と観客が一体となって独特の雰囲気をつくりだすスポーツだからこそ活用できると言えそうです。プロジェクションマッピングとセンシングを組み合わせ、声援が会場の演出と連動するシステムや、コロナ禍を経てリモート観戦での応援を会場に反映させる技術も出てきています。

 これらのスポーツDXにおいて、キーとなるのがAIです。AIは広範なものや同時に行う作業などが得意です。数千人数万人が集まるスポーツのオペレーションにAIは相性が良く、DXによってより高度に、より複雑になるスタジアムやアリーナの管理を統合する上で必須となるでしょう。今後、スポーツとITビジネスのリーチポイントはますます増えていくものと考えられます。AIの実装が進む中で、スタジアムやアリーナが「愛(AI)」されることを願ってやみません。


上林功(うえばやし・いさお)1978年11月生まれ、神戸市出身。追手門学院大社会学部准教授、株式会社スポーツファシリティ研究所代表。設計事務所所属時に「兵庫県立尼崎スポーツの森水泳場」「広島市民球場(Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島)」などを担当。現在は神戸市や宇治市のスポーツ振興政策のほか複数の地域プロクラブチームのアドバイザーを務める。

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