阪神が15日、ナゴヤドームで行われた中日戦に3-5で逆転サヨナラ負けを喫して同一カード3連敗。勝率は5割に戻り、2位の中日とは1.5差、4位の横浜DeNAとも1差となってBクラス転落の危機を迎えた。敗因は阪神が犯した8つのミス。新型コロナ禍に起きた雑音をシャットアウトするために球団が早々と示した矢野監督の続投方針が逆効果となっている。
高橋が逆転サヨナラ3ラン
目標を持つチームと持たないチームの明確な差が出た。3-2の1点リードで迎えた9回に悪夢が待ち受けていた。予兆は痛恨のミス。一死一、二塁から、ビシエドのライナーを好捕したセカンドの植田が二封を狙ってタイミング的に間に合わない二塁へ送球し、これが大きく上へそれた。しかも、カバーも遅れた。一度、ベースに戻った二塁走者の京田は、それを確認して三塁へ進み、一塁走者の遠藤も二塁へ。一打サヨナラの二、三塁のピンチに変えてしまったのである。だが、幸いというべきか、一塁ベースが空いた。 5番の高橋か、6番のシエラかの選択。確率論で言えば、得点圏打率が3割を超える左打者の高橋よりも同.286で右打者のシエラである。しかし、ここで阪神ベンチが選択したのは高橋との勝負だった。 守護神スアレスは、カウント1-1から投じた159キロ表示の甘いストレートを狙い打たれた。コンパクトなスイングにアジャストされた打球は、逆方向のレフトスタンドへ消えていく。結果論ではなく勝負を見誤った阪神ベンチの采配ミスである。 サヨナラのヒーローとなった中日のキャプテンの高橋は、お立ち台で「(何を打ったか)覚えていない」と言った。それほど集中していた。 与田監督は場内インタビューで「もう入ってくれとベンチでみんなで声をだして気持ちで押し込んだホームランだった」と答えた。 「選手がこれまでやってきたことがいい形になっている。これを継続して勝っていきたい」
中日には8年ぶりのAクラス入りという悲願の目標がある。中日の選手の誰もが、それを口にする。前日、完封した大野雄は、「ここから順位が下がらないように必死に投げていく」と言った。高橋も「一生懸命戦っていきたい」と誓う。 意思統一ができているチームの迫力である。 一方の阪神の戦いは目標なきチームの典型だった。 記録に残った失策は3つだが、実に8つもの気の抜けたようなミスを犯していた。 初回に2つ。先発の岩田はトップの大島を一塁ゴロに打ち取ったが、ベースカバーに遅れ内野安打とした。バントで送られ、アルモンテに中日の球団記録とあと4に迫る21試合連続安打をライト前に打たれた。ルーキーの井上が打球のバウンドの判断を誤り、これを後ろへスルー。大島は、楽々先制ホームを踏み、打者走者の二進を許す。 3つ目は2回の走塁。一死二塁から原口の打球は三遊間を抜けたが、二塁走者のボーアは何を思ったか、三塁へ進まず二塁へ後戻りしたのだ。目の前の打球が抜けるのを判断してから走っても間に合うタイミングだったが、痛恨の走塁ミス。一死一、三塁となるところが一死一、二塁にとどまって、続く井上は三塁ゴロに倒れた。考えられない走塁のボーンヘッドで同点機を逃したのである。 4つ目は、その裏一死から松葉のセカンドへの打球に糸原のチャージが遅れて内野安打にした場面。さらに3回には、高橋のゴロを一塁のボーアがポロッとやって5つ目のミス。 6つ目は、4回一死一、三塁で大島の詰まった打球に対しての近本のスタートと追い方が悪くタイムリーにしてしまったミス。ライトは糸井でなく井上で、しっかりと近本のカバーに走っていたのだから安全策を取らず猛チャージし勝負しても良かった場面である。 これもチームの守備意識への希薄さを示す記録に残らないミスだ。この試合で3つの失策を重ねたチームは今季の失策数を両リーグ最多の「70」に増やした。 試合途中に円陣を組み、内野守備走塁担当の久慈コーチが守備の徹底を訴えていたが、集中力の欠如は、そんなものでは埋まらなかった。
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